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彼の冷たい眼差しと、人を蔑むような口元が、脳裏に浮かんでくる。
自分の欲望のためだけに、瑞穂ちゃんを殺し、犯行を隠すために、関係のない人間をも次々に殺した殺人鬼……。
「……で、その黒崎は、どこ行ったんだよ?」
陸人が押し殺したように執行人に聞いた。
冷徹な声が、答えを告げる。
「黒崎は……。私が殺しました」
「……!!」
あの後……彼は殺されたの!?
「あの扉の向こうにありますよ。彼の死体がね」
執行人は、ずっと右手に握っていた刀をすっと上げると、その刃先を大きな両開き扉に向けながら淡々と言う。
きっと……嘘じゃないのだろう。執行人の刀と、ローブを赤黒く染めている血は……おそらく、黒崎さんの物……。
「……」
また暫しの沈黙が、広間を埋め尽くした。
やがて、その沈黙に終わりを告げたのは、陸人。
「……お前は」
様々な感情が入り雑じったような瞳で、陸人が執行人に問う。
「お前は、一体……誰なんだ……?」
みんなが同じ思いで、一斉に執行人を見つめた。
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