真実

23/26
前へ
/333ページ
次へ
「早くから、次期社長だと決められていた私は、周りの大人達からも、一目置かれ、特別な対応をされてきた。父も、私を娘ではなく、いつも後継者として見てきた。そんな中、瑞穂は、小さい頃から何も変わらず、私と一緒にいてくれた。父や周りの大人達からは評価は得られなかった瑞穂だけど、あの子は私にない優しさで、人を包み込むような魅力に溢れてた」 瑞貴は、シンデレラの壁画に、頬を当てた。 「本当は、留学なんかしたくなかった。瑞穂と離れるのが寂しくて……。だから、プロジェクトの変更で、日本に戻ってきた時は、本当に嬉しかった。瑞穂と一緒にいたいから、なるべく目立たないように高校生活を送るよう気を付けてた」 無機質な表情だった瑞貴の顔に、幸せな想い出が微かに滲む。 「周りの大人達は、私の能力と、早川エンタープライズの後継ぎということを称えて、成功者(シンデレラ)だと言ってるわ。でもね、本当の生まれながらのシンデレラは、瑞穂みたいな子のことを指すのよ」 そう語りながら、瑞貴は瞳を閉じる。
/333ページ

最初のコメントを投稿しよう!

298人が本棚に入れています
本棚に追加