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さよなら、青春18
「もー、こんな時間に食べたら太るじゃない! でも食べたいから食べる! 美味しい!」
雅和が口にすると飴玉くらいの大きさの唐揚げを爪楊枝で刺して恨めしそうに口に運んでいる。
「太郎、なんか機嫌よくねえ?」
友樹があくびまじりに言った。
また赤とピンクが逆だが、それを注意されることもない。
雅和はさっきからスマートフォンに夢中だからだ。
部屋の雰囲気はだらけて、作業効率は著しく低下している。
「そう? べっつにー?」
「あ、さゆちゃんからラインだ。んー? 今日、打ち合わせしたいことがあったんだって。おみや…ウソォ! たい焼き買ってきてくれてるんだって!」
「んじゃ、今から戻る?」
「は? 今から?」
「せっかくお邪魔虫は退散してきたのにー? でも、一応聞いてみようっと。アタシも早めにさゆりちゃんと打ち合わせておきたいことあったのよね。あ、それに実はお肉も下処理しておきたかったのよー」
「あ、俺もユキにドレスのこと聞いとけって言われてたの忘れてた」
「さゆちゃんから返事きたわ! 待ってるって!」
「じゃ、行こー。これも持って行ってやろーぜ。でかい袋ないわ。ゴミ袋でいっか」
「一応、歩にもラインしとこう…」
次々に男三人が腰を上げ、動き出す。
まるで、水を得た魚のようにいきいきと見えるのはおそらく気のせいではない。
「結局、サプライズじゃなくなるじゃないー」
今日から作業は五人で夜なべになるだろう。
明日も明後日も、その次の夜も集まっているだろう。
「仲良すぎてキモいよね、俺ら」
「なあ、歩、既読になってんのに返事ねえんだけど。怒ってんじゃねえ?」
「この際、歩は無視よ!」
「そうそう、さんざん友樹のことも俺のことも無視して、わがまま貫いてきたんだからさ」
「あ、アタシ、アイス買いたい。夜食はたい焼きバニラアイス添えにしましょー!」
「コンビニ寄ろー」
エッジワースは、またさゆり有りのエッジワースになった。
でももうあの頃のエッジワースではない。
夢を叶えて、大人になって。
言うなれば、エッジワース、フェーズ1からフェーズ2へ。
ピンクと赤のハートを袋に詰める。
さよなら、青春。
さよなら、初恋。
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