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「もう! 人生、一度きりしかないのよ。どうしてもっと学生生活を謳歌しなかったの」
「マサコは男子校だもんね。さぞや謳歌したんだろうね」
メンバーは時折雅和のことをマサコと呼ぶ。
マサコは、まあね、と意味深な笑いを浮かべてから、再びはがきを見た。
下部に各クラスの同窓会委員の名前がそれぞれ記載されていることに目を留めて、
「南高って一学年七組もあったの? うちは三クラスしかなかったから寂しかったわァ」
「男ばっかりで三クラスって、それもう十分なレベルだが」
「早川君のクラスってことは、太郎は四組だったのね。歩と友樹は何組だったの?」
「ああ、俺と歩は同じ三組で……、おい、ちょっと待った。そこに他のクラスの委員の名前も書いてあるって言ったな」
「トモー、マサー」と一太郎が声を低めたのに、二人とも気づくのが一歩遅かった。
友樹が慌てたように雅和のもとに駆け寄り、その雅和はあからさまに言葉を詰まらせていた。
「へえ? うちのクラスは誰なの、そのドウソウカイイインって」
よりによって、ここへきて、ゲームに熱中し、それまで全く会話に絡んで来なかった歩が話に入ってきた。
「まあ、名前言われても、俺も絶対知らねえけどなー」
相変わらず視線と意識は手元の小さな画面の中で、その会話が片手間であることも、答えに対してたいした興味がないことも明らかだ。
それならば、最後まで無関心でいればよかったのに。
「えっとね、その……、三組はね……」
歩を除く三人が、無言でそれぞれ視線を交わす。
こういう場面で白羽の矢が立つのはいつも一太郎で、なぜならこういうときの潔さといったら驚くほど男らしい。
友樹と雅和のあぐねた視線を受けるや、迷いもなく、むしろ挑発するかのように言い放った。
「三組はしのしのだよ、きりやん」
控室にはゲームのBGMだけが異様なまでに聞こえている。
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