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「歩こそ、そんな堂々と指輪して大丈夫なん?」
言われて、歩は自分の左手薬指に触れた。
最近、暇があればいつも手遊びがわりに触って、指の周りくるくる泳がせてみたり、目を凝らして細かい傷を観察したり、口付けてみたり。
スマートフォンに触れる回数より絶対に多い。
「そう言えば、ファン離れの方も心配なさそうって槇ちゃんが言うてた」
「そう、よかった」
「まあ、付き合ってるの発表した時にある程度のファンは離れたからな」
エッジワースである前に、個人であり、そして、そこにある気持ちは誰にも支配させないし、できない。
そこだけは譲れない。
そして、それをわかってくれる人たちが今のファンだ。
「それが俺は嬉しいから」
二本めのビールを取るためにさゆりが席を立つ。
歩の方もすでに半分くらいになっていたが、今日はまだもう少し飲めそうだ。
そのうちに、ぬるくなる、とさゆりに怒られるペースだけれど。
「それにしても、同業の人たちを間近で見るのはいい刺激になるわ」
「さゆりはそんな刺激いらねーじゃん」
「いやいや、わからんよ。間接的にインスパイアされることがあるかもしれんよ?」
「ねえよ」
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