貴女に寄り添う光のように

15/15
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 雅お嬢様の眉が、情けないほどハの字に下がる。  雅お嬢様、あなた、最初からどれだけがっついて食べるつもりなんですか。  俺は思わず、雅お嬢様の眉間を指先で弾きながら声に出して笑ってしまった。  それにまた拗ねたお嬢様が噛み付いてくる。  ……ああ、幸せだ  そんな他愛もないことで満たされながら、俺はふと車窓にかかる月を見上げた。  今まで冴え冴えと冷たく見えていた月が、今はほんのりと優しいクリーム色を帯びているように思える。  ……貴女という太陽に寄り添える、月であれますように  そんな願いを胸の内に転がして、俺は今宵のエスコート計画を脳内で再計算していた。  雅お嬢様が、心行くまでディナーを楽しめるように。 《END》
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!