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「一条雅っ!! あんた、いくらなら悠を売るのっ!?」
いきなり叩き付けられた言葉に、雅お嬢様はキョトンと首を傾げた。
サラサラにくしけずられた髪が、その動きに合わせて肩の上を滑る。
「今まであんたが悠にかけたお金ごと悠を買い取るって言ってんのよっ!!
いくらなの?
いくらなら売るのよっ!?」
今や店中の視線が雅お嬢様と女に集中している。
雅お嬢様にいわれのない醜聞を付けられないように何かしら動きを取らなければならないのに、シンと静まり返った空気に圧倒されて俺でさえ身動きが取れない。
「時任は、私の執事だけど、売り買いできるものではないわ」
だが雅お嬢様がそんな視線に動じる様子はなかった。
いつも通りの自然体で立った雅お嬢様は、激情に揺れる女の目をひたと見据えて澄んだ言葉を紡ぐ。
「物ではないから、私の意思で売買することなんてできない。
時任の生きる道は、時任自身が選ぶ。
そこに私が介入することはできない」
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