貴女に寄り添う光のように

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 ああ、そういえばこのお方は、俺の感情が宿った声を聞いたことがなかったなと、ふと思った。 「それどこか、かくれんぼや鬼ごっこ、キャッチボールのお相手までしております。  おてんばなくせに、執事以外に遊び相手となる友達さえいないのかと思ったくらいです」 「一条に名を連ねる女なのにキャッチボール?  旦那様は何も言わないの?」  女は美しい顔に嘲笑を浮かべた。  他人の不出来を鼻で笑って嘲るのが趣味のような方だから、俺にとっては馴染み深い表情だ。 「特には何も。  それどころか、お屋敷の使用人は、誰もそんなお嬢様を諌めようとはなさいません」 「まあ!  名家が何たるかを理解していない馬鹿ばかり……」 「みな、お嬢様がなぜそんなことをするのか、理由を承知だったからです」  だがその顔が疑問に歪む所を見たのは、もしかしたら初めてだったかもしれない。
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