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その日、俺の平穏な人生は音を立てて崩れ落ちた。
空手道場からの帰り道、コンビニで水を買って、人気のない暗い路地を歩いていた時、その音は聞こえた。
バキッ!
何かを砕くような音。
それが公園の中から聞こえたから、普段はその前を素通りするけれど少し気になって。
面倒に巻き込まれると厄介だから、そっとフェンスから公園の中を覗いた。
「あ……あ……」
ここからでは暗くて何をしているかわからないけど、木にもたれ掛かって二人。
どこかのバカなカップルが、公園でイチャイチャしてるのかなと、馬鹿らしくなって帰ろうとしたけれど……。
「あ、あひっ……あう……あふ……」
……変な声を出しているのは男だ。
それも、ビクンビクンと腕が跳ねるように動いている。
何かが……おかしい。
スマホを取り出し、いつでも警察に電話が出来るようにして、俺は目を凝らした。
暗くて良く見えないけど、徐々に慣れてきて、その二人の姿が闇の中に浮かび上がる。
「!?」
月明かりが照らし出したその光景は……男と、男の背後から、大口を開けて頭部にかじりついている異形の化物の姿だった。
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