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だけど.....その拳は途中で止まり、九条さんも、鬼堂も驚いたように顔を横に向けた。
「間一髪だったな。おい坊主、女を殴ろうとするなんてよ、見下げ果てたやつじゃねぇか」
鬼堂の腕を掴んで、そう言ったのは……山添警部だった。
誰かが駆け寄ったのはわかっていたけど、鬼堂と九条に目が行っていて、誰かはわからなかった。
「なんだテメェは!部外者が邪魔すんじゃねえよ!」
一度は振り下ろそうとした拳。
今度はそれを、山添警部に向かって横方向に振った。
突然の攻撃に回避する間もなく、拳が顔にめり込む。
「ぐっ!」
「ま、まずいぞ鬼堂くん!その人は警察の方だ!」
慌てて耕太がそう言ったけど、既に殴った後だ。
「だ、大丈夫ですか山添さん!」
近くに停めていた車から、森下刑事が飛び出して、山添警部に駆け寄った。
「大丈夫だ……おいガキ。テメェにも何か事情がありそうだな。この一発は何も無かった事にしてやる。だから話を聞かせろ」
殴られた頬をさすり、森下刑事に支えられて、山添警部が鬼堂を睨み付ける。
耕太が言った「警察の方だ」という言葉に反応したのか、鬼堂はそれ以上暴れようとはしなかった。
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