ウタガイ

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その後も、他愛のない話をして時間は過ぎて行った。 あまり意識しないようにと思うけど、小野が身体の向きを変える度、チラチラと見てしまう。 そして、19時になると、ドアの前で待っていたかのように母さんがノックをして部屋に入って来て、夕食をテーブルの上に置いて出て行った。 なぜか少しガッカリしていたみたいだけど、母さんが期待するような事は何もないから安心してくれ。 問題は……ここからだ。 風呂は良い。 当然別々に入るし、いくらおかしな家族でも、一緒に入れと強要する事はないだろうから。 だが、うちの家族なら、布団をこの部屋に運び込む可能性がある。 ないと思いたいけど、それがうちの家族だ。 そんな不安に襲われながら風呂に入り、部屋に戻る途中で空いている部屋をそっと除くと……良かった、こっちに布団が敷いてあった。 疑ったりして悪かったよ、母さん、姉ちゃん。 ホッと胸を撫で下ろし、部屋に戻って小野に風呂に入るように伝え、寝室に案内した。 殺風景で、フローリングの上に畳が敷かれているだけの部屋だけど、寝るには問題ないはずだ。 そう考えて俺は、部屋に戻ってスマホを手に取った。
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