ウタガイ

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「は、はへ……」 死にたくない、喰われたくないともがき、何とか脱出しようと試みるけど……全然動かない! 唇と歯を喰われて、声もろくに出せない中で、小野の顔が迫る。 素早く、喉元に噛み付いて……そこから一度も顔を上げることなく、俺の首を食い尽くしたのだ。 息が出来ない……頭と身体を離されて、こんな状態で生きていたくないのに……死ねない。 「ごめんね、浦谷。私がゾンビなんだ。怖がらなくて大丈夫だよ。あんたの身体を、残さず食べてあげるから」 不気味に笑う小野の顔に恐怖する事しか出来なかった。 顔が……口が……鋭利な歯が、俺の顔に近付いて来る。 もう、逃げる手段を失った俺に、それを回避する事なんて出来なくて。 額に歯を立てられ、強引に肉と骨を噛み砕かれた。 俺には見る事が出来ないけど、そこから見えた脳みそを、小野はもさぼるように食べている。 早く殺せと思っていても、なぜか死ねなくて。 この苦しみにひたすら耐えるという地獄を、俺は味わい続けた。 どうしてこうなったんだと、小野に喰われながら。 しばらくして、俺はやっと考える事も、感じる事も出来なくなった。
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