2819人が本棚に入れています
本棚に追加
「は、はへ……」
死にたくない、喰われたくないともがき、何とか脱出しようと試みるけど……全然動かない!
唇と歯を喰われて、声もろくに出せない中で、小野の顔が迫る。
素早く、喉元に噛み付いて……そこから一度も顔を上げることなく、俺の首を食い尽くしたのだ。
息が出来ない……頭と身体を離されて、こんな状態で生きていたくないのに……死ねない。
「ごめんね、浦谷。私がゾンビなんだ。怖がらなくて大丈夫だよ。あんたの身体を、残さず食べてあげるから」
不気味に笑う小野の顔に恐怖する事しか出来なかった。
顔が……口が……鋭利な歯が、俺の顔に近付いて来る。
もう、逃げる手段を失った俺に、それを回避する事なんて出来なくて。
額に歯を立てられ、強引に肉と骨を噛み砕かれた。
俺には見る事が出来ないけど、そこから見えた脳みそを、小野はもさぼるように食べている。
早く殺せと思っていても、なぜか死ねなくて。
この苦しみにひたすら耐えるという地獄を、俺は味わい続けた。
どうしてこうなったんだと、小野に喰われながら。
しばらくして、俺はやっと考える事も、感じる事も出来なくなった。
最初のコメントを投稿しよう!