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「ふぅ……」
あのブサ男を気絶させてしまった日から三日が経った。街で彼と出くわす、なんてベタなことはなく。僕は、いつも通り、惰眠を貪っていた。
「今日はバイトも、講義もないし。ごろごろしていよう」
そんな決意を口にした直後、来客を知らせるチャイムが鳴った。
居留守を使うのもありだったが、もしかしたら宅配便かもしれない……よね?
「はーい」
と短く返事をしながら、玄関を扉を開ける。
その先にいたのは、ごついオジサンでも、新聞の勧誘でもなく、宅配便でもなかった。
「…………」
――少女が立っていた。短く切り揃えられた髪であるが、目の部分まで伸びていて、表情が良くわからない。白いワンピースは純粋に可愛いと思った。そして、手には何か袋を持っている。
「……えっと、どちら様?」
「この、前は。助けてもらって、ありがとうござい、ました」
ぽつり、ぽつり、と。彼女から、か細い声で言われる。
ん? 会ったこと、あるか……?
「良かったら、これ、どうぞ」
続けて、彼女は袋を差し出す。
中を見ると、そこには弁当箱が入っていた。
「……また、来ます」
そう言って、彼女を深くお辞儀をすると、エレベーターの方向へと、歩いて行った。
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