第4章 新しい生活

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祐二は、上村会長の指示に従い、彩也子のためにマンションを購入した。 晶子の手前もあり、会長宅には彩也子を住まわせるわけにはいかないからである。 そのマンションに、祐二は彩也子を連れて来た。 2LDKだが、かなり広く、近くに散歩できる公園もある。 「これが、私のためのマンションですか」と彼女は、幾分驚いたようだった。 これまでの古いアパートに比べたら、彼女にとってはとてつもない高価な住まいだった。 「なんだか、私にはふさわしくない気もするわ」と彼女は言った。 「そんなことないですよ。上村ホールディングスの会長の娘であるあなたには、質素なくらいですよ」と祐二が言った。 そうなのか。と思う反面、今までの母との暮らしを思い出すと、死んだ母が哀れであると感じていた。 そのためか、心から喜ぶ気持ちにはなれないのだった。 彩也子のさえない顔を見て祐二が言った。 「気にいりませんか?」 「そうじゃないんです。ただ、私がこんな生活するのは、ふさわしいのかなと思うんです」 祐二は、彩也子は謙虚な人なんだと思った。 「ふさわしいですよ。そんなに考えなくていいですよ」 彼は彼女の顔を見て言った。 「大丈夫、すぐに慣れてきますよ」 「香川さん、聞きたいことがあるけれど、いいですか」と彩也子があらたまるようにして言った。 「何ですか」と祐二が言った。 「私にはお姉さんがいるのですか?弁護士さんから聞いたのですけれど」 「ああ、晶子さんのことですか」 彩也子は気まずそうに言った。 「お姉さんは、私のこといい感情を持っていないのですね」 祐二は何と答えればいいのか考えた。 「まあ、晶子さんはプライドが高い人ですからね。でも、そのうち彼女も彩也子さんのこと、理解できるようになると思います」 「香川さんは、お姉さんのことよく知っているみたいですね」と彩也子が言った。 「従姉ですからね」 言った瞬間、祐二はしまったと思った。 「従姉?香川さん身内だったの?」と彼女は聞き返した。 祐二は返事が返せなかった。 「父方の?」 「もしかして、奥様の・・」と彩也子が言った。 祐二は躊躇したが、重たい口を開いた。
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