129人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕の叔母は、上村会長の妻だったんですよ」
彩也子の顔から血の気が失せた。
「そうだったの」声が震えていた。
「ごめんなさい。私のために・・香川さんだっておもしろくないでしょう」
彩也子は彼から顔をそむけた。
こんなに良くしてくれる彼が、奥様の甥だったなんて、彼に申し訳ないと彩也子は思った。
「彩也子さん」と祐二は彼女の様子を見て言った。
「確かに、あなたのことを聞いたとき、僕もショックでしたが、叔母は1年前に亡くなりました。そして彩也子さんのお母さんも5年まえに亡くなっています。でも、あなたがこうしているのは現実だ。今、この時を生きているあなたが大事なんですよ」
祐二は、本当にそう考えているのだった。それだからこそ、彼女のために動こうと決意したのだ。
「ありがとう。でも、ごめんなさい・・」
彩也子は涙ぐんでいた。
彼がやさしいだけに、彼女は苦しかった。彼の気持ちを思うと悲しかった。
最初のコメントを投稿しよう!