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扉の中
内線でフロントに連絡すると、御園さんがきてくれた。
御園さんは、お客さんと僕から事情を聞くと、わかりました、と答え、あらためて室内を調べている。
とりあえず、この部屋から避難した方がいい、とか、警察に連絡すべきだ、とか、僕はいろいろ思うのだが、なのに、僕も、御園さんも、お客さんも、倒壊しかけた部屋にじっとしている。
やはり、ここは誰かの夢の中で、僕らは登場人物ABCにすぎないのかもしれない。
もともとこの部屋にいたお客さん、仮にアキコさんとしよう、が言うには、今日、友達と数奇屋に来た彼女は、友達と一緒にこの部屋にいて、ある危機に遭遇した。
でも、いまやその危機は去り、友達も退出したのだそうだ。
危機の内容については、話せないという。
僕は、アキコさんと友達が危機に遭遇していた時に偶然この部屋を訪れ、巻き込まれた。
御園さんは、すべてが終わった後に僕に呼ばれてここへきた。
そして、
「事情はわかりました。
アキコさん。あなたは、「誰か、助けて!」 で、
世界の危機を救ったのですね」
「大げさですよ。
たぶん、正解ですけど」
自称”批評家”の御園さんがくだした評価に、僕らよりも少し年上らしいお姉さん、アキコさんはわずかに笑い、頷いた。
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