扉のむこう

2/9
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 外観はやたらに窓の多い、おもしろみのない長方形のコンクリートの建物だし、各階の非常口以外の出入り口は一階の正面限界っぽいガラスの扉のみ。入るとすぐにロビーというか小広間があって、あとは一、二、三階とも、バストイレ付の小さな部屋、部屋、部屋。  階段と、なぜか誰も使わないエレベーター。緑の非常灯が常にともっている。  館内の見回りをしていて、自分以外誰もいない廊下で、擦り切れた赤い絨毯を歩いていると、雰囲気がありすぎて、自分がホラー映画の中に閉じ込められた気がしてくる。  そんな得体の知れない施設で、僕と御園さん、高校生男女二人がバイトとしてなにをしているのか? と問われれば、数奇屋を訪れるお客さんたちのお世話をしている、としか答えようがない。    
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!