0人が本棚に入れています
本棚に追加
お世話といっても、たまに立ち話をする程度だ。一回につき五分も話していない。
あいさつと天気、その他とりとめのないどうでもいいような世間話。僕らはお客さんに、金銭のやりとりもサービスらしいサービスもしない。
数奇屋のお客さんたちは、性別、年齢、外見、おそらく国籍もばらばらで、だいたい一人で訪れてくる。
みんな無口、無表情で、僕らから声をかけても、戻ってくるのは会釈ぐらい。
ほとんどのお客さんが、僕らにはなにも告げず、はじめから持っているカギで自分の部屋? へと入ってゆく。
バイトの日になると僕らは学校帰りに一緒に数奇屋を訪れる。
玄関のドアは閉まっているから、御園さんが渡されているカギで開錠し、中に入る。あとは決められた時間まで四~五時間、基本的に一階の受付にいるだけだ。
時間になると、僕らは帰る。帰る時には、御園さんがまたカギをかけてゆく。
最初のコメントを投稿しよう!