0人が本棚に入れています
本棚に追加
数奇屋内にお客さんがいようがいまいが僕らの行動に変更はない。
僕らが来る前から中にはお客さんがいて、僕らが帰ろうと関係なく数奇屋の中で過ごしている人がいる、なんてのは普通だ。
お客さんとは、たまには顔を合わすし、ごくごくまれにむこうが望めば話もするけど、僕はこれまで一度も数奇屋のスタッフとも、経営者とも会ったことがない。
御園さんは、数奇屋のオーナーと知り合いで、このバイトを頼まれたらしいけど、くわしい事情は話してくれない。
僕の場合、給料の受け渡しも仕事の指示も、常に御園さん経由だ。
数奇屋ですごす時間は、夢の中にいる気がするくらい現実感がない。
少なくとも僕には。
他人の夢の中に、登場人物の一人として迷い込んでしまって、その人が起きて、この夢がさめまで世界に変化は訪れない。
そんな、説明の難しい不可解な状態。
最初のコメントを投稿しよう!