扉のむこう

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「監督さん。そろそろ見回りの時間ですね。私、行ってきましょうか」  一階ロビーのソファーに御園さんと並んで腰かけて、TVに映るホラー映画をみるともなく眺めていた僕は、彼女の声に腰を浮かせた。 「僕が行ってくるから、ここで待っててください。あ、もしかして、ホラー映画を一人でみるのは、苦手とか」 「私、批評家として、映画に得意や苦手はつくらないようにしてるんです。  個人としては、それは、多少の好みはありますけど、でも、どんな映画も、クリエイターさんの頭の中にしかなかったイメージを具体的な形、色、音、空気。一瞬、一瞬の場面にして再現している、奇跡の集まりじゃないですか。  私ごときが、得手不得手を語るなんて、おこがましいです」  あくまでおとなしく、ひっそりとした雰囲気を保ったまま、”批評家”の御園さんは、ゆっくりと一生懸命、映画に関する自分の意見を語ってくれた。  
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