扉のむこう

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 つまり、御園さんは映画愛にあふれていて、その夜もいつも通りだった。 「了解です。失礼しました。  僕、見回りしてきます。ここで映画、みててください」 「すいません。ありがとうございます。恥ずかしながら、この映画、名前だけ知っててみるの初めてなんです」 「たしか、”アイデンティティー”でしたっけ」 「2003年制作のアメリカ映画、”アイデンティティー”です。変わり種のサスペンス映画の名作として、よくでてくる作品なんですが、私、不勉強で」  モーテルに閉じ込められた人たちが、やたら死ぬ物騒な映画だとは思ったが、そこそこの名作らしい。    僕としては、だったら、なおさら御園さんに、最後まで見ていて欲しい。 「僕、行ってきますね。一応、御園さん、ここに一人になるんで気をつけて」  御園さんの、少し照れた笑顔に見送られて、館内のパトロールへ出発した。
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