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「私……マスター?
どこ?」
「良かった。正気に戻ったのね。」
加奈子は、光の無い瞳で顔を上げ、女を見る。
女も破れた服をブラ代わりに下着のみの格好で、風呂上がりであるかの様に濡れた長い髪を綺麗に纏めている。
「こんなものしかないけど、飲んで?
温まるよ。」
「………。」
加奈子は、女からマグカップを受け取り、中を覗き見る。
お湯の中に、草が浮いている。
香りを嗅いでみると、それはレモンの様な香りがした。
「大丈夫よ。毒は入ってないから。
まさかね。こんな所にレモングラスが生えているなんて、思っても見なかったわ。」
と、笑みを浮かべ、女は自分のマグカップを口にし、ふぅとため息をつき、その場に座る。
「…………。服………。」
加奈子が発した第一声は、服の事。
気がついたら、裸同然だったのだから、気になる事の一つだろう。
「服?
あぁ。あなたの服ね。
洗って血を落としておいたから。
今、そこに干してあるよ。」
「そう………。」
ここで、初めてレモングラスのハーブティに口をつける。
味はほとんど無いものの、レモンの様な匂いが鼻を通り抜ける様に香り、体を温める。
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