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俺の思考を読むな!
シャトルバスの頭上を戦闘機が掠めていく。左横は航空基地だ。右を見るとモノレールが駅に吸い込まれるところだ。僕はフロントミッションを思い出した。断然、スーパーファミコン版の奴が一番面白い。
「あれが赤嶺駅よ、ロイドは格好いいよね?」
隣の咲子が平然と言った。
「思考読むのやめてくれるかな?」
「え?デジャブ?考えてたことが同じなんてさ、私たち?超運命的じゃない?」
怖い女だ。真栄田って怪しいよな?『よく来れた』って、あんまりいい意味では使われないよね?
ラスボスの定番のセリフだよな?クッパあたりが、「マリオ!よく来れたな!ゲハハハ!」とかよく使うよね?
「クッパねぇ、奴の吐く火の玉は厄介だよ」
厄介なのはあんたの方だよ。
「あとで覚えておきなさいよ?」
イオンのネオンを見て力丸が、「古河にもあるんだよ」と誰にともなく言った。
「コガってどこね?」と、真栄田がラジオをつけながら言った。力丸は、運転席のすぐ後ろの席に座っている。それにしたって察しが良すぎる。
沖縄の人間には予知能力が備わっているらしい。
「茨城県にある小さな街ですよ。栃木県の県境にあるんだけんども?鮒の甘露煮で有名ですよ」
1度食べたことがあるが、生臭くてどうも苦手だ。マグロや鮭の方が断然うまい。
ラジオから甲高い歌手の声が聞こえている。誰の歌だっけ?《あの~味噌汁の作り方を書いておけ》あぁ!白雪姫だ。フォークソングだっけ?
「偉そうな態度だね?何様なんだよ」
咲子が爪をかじりながら言った。
「本当だよね?味噌汁くらい自分で作りなよね」
「さっすが、ゆとり君だよね?鮒ぐらい食えよ」
この女、早めに消した方がいいかもな?
シャトルバスが明治橋を渡る。左手は那覇港だ。巨大なタンカーの姿が見えた。
「滝って本当、面白い奴だよな?」
後部席で蒲生が爆笑している。ヘッドホンをしている。隣に座る充子は、蒲生の太股をなでなでしている。あんなオバサンでも溜まるんだな。
多喜のことを不意に思い出していた。多喜は、どことなく死んだ弟に似ていた。愛していた。
太宰の奴、八つ裂きにして殺してやる。
咲子が侮蔑の笑みを浮かべた。
「ウゲェ、トーマってそーゆー趣味あったの?」
「おっ、おい!あれを見ろ!」
千葉の叫び声が響いた。
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