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余地能力
「唐丸籠って知ってるかな?時代劇に出てくる穴の空いた丸い籠でさ、罪人を運ぶ人力の護送車。吉田松陰はあれに乗って護送されたんだって」
館山駅に向かうバスの車内。
「トウマルカゴ?へぇ、杉谷君って物知りだね?」
咲子はスマホをいじっている。ヨウツベで風の谷のナウシカを見ている。
「うっわぁ、幼稚園の頃に流行ったんだよね?あの頃はこんな未来になるなんて思ってなかったよ」
「私は知ってたわよ。余地能力あるんだから、君と会えること」
「余りもんって言いてぇのか?」
対向車線を介護タクシーが通り過ぎる。何事も起きなかった。利用者が暴れることなどしょっちゅうだったよ。あれもクスリの副作用だったのかな?
「トウマルカゴはさ、ウンチも穴からするんだって。垂れ流しだよ、利用者がさ、オムツをむしりとって食べたことがあるんだよ」
「綿アメだと思ったのかな?杉谷君はウンチの話がそんなに好きなの?」
人足寄場の話をしようと思ったが、咲子は頭が悪いからやめた。長谷川平蔵が石川島に造った軽犯罪更正施設だ。
人即よせばとか言うんだろうよ。
「自身番屋って知ってる?」
「自信番屋?カレー屋さん?」
「パサパサチキンカレー上手いよな?CoCo壱番屋じゃねぇんだよ、必殺仕事人とか知らない?」
「うるせぇな、古いドラマだな。ナウシカが死んじゃうよ~!広告うぜーな!白猫うぜーな」
「首か危機っち前」
咲子が頭を叩いてきた。
「首かは危機っまた」
「杉谷君馬鹿だもんねぇ、首になる危機はあるよ」
「馬鹿にすんなよ、俺の祖先は信長を射殺しようとして失敗したんだぞ!」
「ダメじゃん」
自身番屋は小間物を売るのが本業。副業として障害者や老人を安い賃金で雇うのさ。それを、《番太郎》と呼んだ。
「もう!ナウシカが死んじゃったよ!」
「おいおい!マジかよ?」
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