【それぞれの心】

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憤りが萎え、じっと健吾の顔を見つめる。 薄闇の中で、美月の姿が思い浮かんだ。 「健吾がいなくなった」と泣きながら佇んでいた彼女は、今は健吾の帰りを信じて、中国で残された社員の世話をしている。 「……バカか。 間違ってるよ。お前はなにもかも全部、間違ってる」 ため息とは別の息が、浩二の口からこぼれた。 健吾は心底バカだ。 そんなことをしても美月が幸せになれるはずがないし、本当は健吾だってそれをわかっているのに。 「……バカはお前のほうだろ。 お前にだけは言われたくねーよ」 「あいつは一度でも、お前に幸せにしてって頼んだのかよ? 美月のこと、そんな女だと思ってんの?」
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