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「……お前。
本気であの女のことが好きだとか言うつもり?」
健吾は半信半疑の眼差しを向ける。
その問いに答えず、浩二は立ち上がってポケットに手を入れた。
取り出したのは、美月から預かっていた健吾のスマホと、今朝プリントアウトした八つ折りのメモだった。
健吾はしばらくの間、差し出されたそれを眺めていた。
やがて浩二が動かないのがわかると、ため息をひとつついて手を伸ばす。
「お前が書いた離婚届、美月が破いて捨てたから。
とりあえず連絡しろ。これ以上心配かけんな」
「……これは?」
しわがついた紙に目を落とし、訝しげに健吾が尋ねる。
「ハラル認証について。
お前の会社、中国だけじゃなくて、インドネシアやマレーシアとも取引してるんだろ。イスラム教徒が多い地域は、それがあると販路が拡大できるらしい」
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