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笑みを含む健吾は、息を詰める浩二の反応を楽しんでいるようだった。
「……なに言ってんだよ」
「しらを切るのかよ。
美月と瓜二つどころか、名前まで似た女を彼女にしておいて」
動揺から反応が遅れた。
偶然だと言い返す準備はしていたはずなのに。
その隙に健吾は鼻で笑い、続ける。
「ミズキ、だっけ。
彼女はお前の事情に、なんとなく気付いてたっぽいけど」
ざっと風が吹き、揶揄を含んだ言葉をさらった。
だけどそれは浩二の体を撫でて、頭の中をすうっと冷たくさせる。
「……どういうこと」
気付いていた? なにを?
鼓動が逸るせいか、発した声が震えた。
そんなはずはないと否定したかった。
そのことだけは、瑞希に知られるわけにはいかないのに。
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