【それぞれの心】

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健吾は浩二の心中などお構いなしに、土手の草をもてあそびながら言う。 「いつだったかな。 お前に用があって会社の近くで待ってた時、あの女とふたりで飲んだんだよ。 まぁ、俺が話があるって言って、無理に連れて行ったんだけど」 それを聞いた時、浩二は思考が停止した。 知らない。 健吾に会っただなんてこと、瑞希からなにも聞いていない。 「なにそれ、話って……」 声を震わせた浩二を見て、健吾は喉を鳴らして笑った。 「そんな睨むな。ただ昔話をしただけだし。 お前が昔、バス酔いがひどかったこととか、カナヅチだったこととか」 健吾と視線を重ねながら、胸騒ぎが大きくなった。 まさかと思った時、「あとは美月のこと」と、健吾がなんでもないように付け足す。
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