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「……んだよ、やってくれるじゃん。
図星さされて、そんな不愉快だった?」
なおも続けようとする健吾に、浩二は地面に膝をついて、こぶしを握り締める。
「お前、いい加減に……」
「お前、ミズキに俺のことを話しただろ。自己中で身勝手なやつだって」
「え……」
思わず目を開いたと同時に、健吾は「その通りだよ」と、かすかに笑った。
「俺と一緒にいたら、これから先、美月はいらない苦労をする。
あいつには、世界で一番幸せになってほしい。
だからお前のところに行けと言った。
お前なら美月を絶対に苦しませたりしないし、大事にするとわかっていたから」
浩二の瞳が大きく揺れ、ふりあげかけた手先が力を失った。
「そのためだったら、俺はだれが傷つこうが、だれを傷つけようが構わない」
かすかな混じりけもない声は、浩二から声を奪う。
数秒の間、視線を絡ませていた健吾は、そこでふっと表情を緩めた。
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