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「……勝手なんだよ、俺は。
美月に自分から浩二のところに行けって言ったのも、そう。
事業に失敗して、金の無心をする俺に失望して、美月が離れていくのが怖かった。
だけど自分がそうしろと言って美月がお前を頼れば、俺の指図だと納得できる」
視線を合わせているのに、健吾はどこか遠くを見ているようだった。
木の葉が一枚、浩二の手の甲に舞い落ちた。
「いつからだったか……。
心の中ではずっと、お前に嫉妬してた。
お前はなんでもそつなくこなすし、人当たりもいい。
浩二が美月が好きだとわかった時、お前が怖くなった。
美月を取られるんじゃないかって、柄にもなくおびえた」
心の奥が大きく揺れた。
ずっと近くにいた健吾がそんなことを思っていたなんて、態度から微塵も感じなかった。
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