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(ミヤサカめ……)
いったいどれだけ泣かせれば気が済むんだろう。
画面に落ちた涙が波打って、消去ボタンがうまく押せない。
そのことも含めて、今まで溜めていたことを、ここに全部書き込めたらどれだけいいだろう。
思いのたけを吐き出して、罵って、無理難題を与えて苦しめて。
最後に「許してあげる」と鷹揚に言えればよかった。
でもそれはただの理想で、現実的じゃない。
自分はどうしたって、だれかの身代わりになんてなれないのだから。
場内が暗くなり、映画の予告が始まった。
アクション映画の轟音が耳を突き抜ける。
瑞希はひとつもメッセージを消去できないまま、スマホの電源を落とした。
鞄にしまい、かわりに取り出したハンドタオルで両目を押さえる。
思えば、この映画館でまともに映画を見たことは一度もない。
泣く専用の映画館。瑞希は映画が終わるまで、ひたすら泣き続けた。
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