side-T

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 ──誰にも、知られたくなかった。  いつまで経ってもいじめられッ子だなんて、さすがに情けない。  小、中学校の時は、誰にも気付かれなかったから、余計に。  高校に入って、またいじめられッ子に戻ったなんて、思われたくなかった。  ──少なくとも、彰ちゃんにだけは、知られたくなかった。  あの日の「ぜったいのやくそく」は、今も僕の心を励ましてくれる。  あの頃の小さな背中と、負けない勇気は、僕の意地を支えてくれる。 「ホント、なんでお前なんかがモテんだ?」 「女子なんて結局、顔しか見てねぇんじゃん」  どふっ、と太股に衝撃がきて、よろめく。 「こんな根暗のどこがいいんだよな」 「ホントだよ、いっつも下向いて猫背で。今だってなんも言わねぇし」  色んな声が僕を罵るのを、黙って聞き流す。  耐えて、耐えて、ひたすら耐えてさえいれば、その内飽きてくれる。  いつもそうだ。  散々罵って、好きなだけ殴って蹴って。  何も言わずに反撃もしない僕を嗤って、去っていく。  ──いつも、そうだった。 「ちょっとさー、マジつまんねぇから、ちょっと面白いことしねぇ?」 「なんだよ、面白いことって」  いつもと違うセリフ。  ハッとして顔をあげたら、ニヤリ、と残虐な顔で笑われる。 「いいな、その顔。そういう顔、見たかったんだよ」  悪意に歪んだ唇が、嗤いながらそう紡ぐ。
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