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彼女は三日間、同じ場所で売り子をしていた。俺が三日続けて通い、最終日に彼女の店じまいを手伝ったのだ。彼女が並べていた最後の商品を買うことを条件に俺は彼女にデートを申し込んだ。その柄が俺の好きなワインレッドであることも決めての1つだった。
彼女はしぶしぶそれを了承した。彼女の商品は全く売れる気配がなかったからだ。
それから俺は彼女と近くの喫茶店に入りたくさんの話をした。話題はもちろん、なぜGWなのに子供向け商品をおかないかということだ。
俺が尋ねると、彼女は小声で話し始めた。
「子供の日だから、ってその商品だけ置いても面白くないじゃない」彼女は拗ねたような声でいった。「母の日だから、イベントだからってそればかり売るのはお客さんに媚びているようで嫌だったの」
もちろん彼女の気持ちもわかる。だがフリーマーケットだからといって、適当に商品を並べば売れるわけじゃない。売るためには戦略がいるのだ。俺はその広告という商品を担っているため、彼女の的外れな考えを適当に聞いていた。
「私はね、商品が売れなくても人の心に残って欲しかったの。皆と一緒の商品がなかったら、逆に目を引くでしょ」
確かにそれも1つの戦略だ。
「まあ、それに引っかかってくれた君がいたから、いいんだけどね」
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