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事実だった。俺は自分のことをそっちのけで考えていたが、俺自体が彼女の罠に嵌っていたのだ。おかげで彼女の最後の商品を買ったのだから、何の文句もない。
俺は笑いながら彼女の番号を聞きだした。その日から俺達の付き合いは始まった。
一年後、俺達は時間を掛けて婚約をして結婚した。それから今でも初夜のようにセックスをするが、子供はもちろんできない。
検査を受けたのは結婚して2年後だった。すでに俺達の歯車を止めることはできなかった。
「お疲れ様」
「ああ」
家に帰り着き時計を眺めると、朝7時を回っていた。途中でパンを摘まんだが、もちろん腹は減っている。再び朝食を食べながら麻美(あさみ)の心を読むことにする。
……彼女は今日が子供の日だとわかっているのだろうか。
こういう日はテレビを点けづらい。どこの番組でも特集が組んであるからだ。
俺達は結婚する前から、何人の子供が欲しいかという話題を出していた。大抵、男と女一人ずつ、という話で終わったが、子供ができれば関係ないよねと魔術のように繰り返していた。
だからこそ指輪はエンゲージのままだった。子供との生活のためにと蓄えていたのだ。
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