第1章

5/9
前へ
/9ページ
次へ
「ざっと見積もって十万円じゃな」 「十万円!? た、高いな~、とてもじゃ無いけど高校生である俺が手を出せない額ですね」  俺は感嘆な声をあげながら、この赤木箱を見た。 「なに、お試しするだけは無料じゃよ」 「確かに、そうですけど。でも、もし俺がこれを持ち逃げしないなんて確証はあるんですか?」 「お主はこれを盗まんじゃろ?」 「ええ、まあ、盗むつもりは無いですけど」 「ならば、いい。言質も取った。それにお主が盗みを働くような男ではないとワシは信じているがな」 「やけに信頼してますね。初めてあったのに」  俺は薄い目で老婆を見ながら言った。 「なにさ、信頼は時として、辛辣な物だが、時に至福なものだ。お主は後者だと、そう信じた。だから貸すのじゃよ」  やけに、達観している老婆か。ふいにそう思ってしまった。 「まぁ、わかりました。三日後ここに来ればいいんですね」 「うむ、そうじゃ」 「あっ! それと、」  俺は大事な事を聞いていないことに気づき声をあげた。 「む、なんじゃ?」 「テレポートの仕方ってどうやるんですか?」  信じた訳じゃない。信じた訳ではないが、何事も挑戦という言葉がある。その言葉に従ってばかになっていいかなと思って、試してみる事にした。 「なに、簡単な事さ。それをつけてテレポートと叫ぶだけでテレポートされる」 「へー、そうなんですか」  やけに簡単なテレポートの仕方がだな。まぁ、単純明快でいいことだ。 「それじゃぁ、三日後、いい台詞が聞けるのを待ってるよ。あぁ、それとテレポート出来る回数は一日一回が目安だよ」 「はい、わかりました」  そういい、俺はそそくさと、この「怪しい骨董品店」を後にした。  そして、家にたどり着き、俺は赤木箱を開けてみる。開けて俺は指輪を手に取った。俺は見つめながら、なんとも、まぁ、綺麗な指輪なんだろうと感激しながら、指に取り付けた。そして俺は叫ぶ。この瞬間、俺は後悔するとは露知らず、呑気にテレポート出来たら良いな何て事を思いながら。 「テレポート!!!───────
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加