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__アメリカ、サウスカロライナ州 TMC(環太平洋軍事企業体)チャールストン支部
戦闘前で慌ただしい空気が流れる格納庫に、帽子を深く被った上官に連れられて歩く男がいた。
男の名は「リアム・アンダーソン」。ブロンズの髪と青い瞳を持つ、二十代半ばのコーカソイドだ。
豪壮な勲章を胸に付けた軍服姿の上官は、格納庫の端の方まで辿り着くと立ち止まり、ブーツの底で音を鳴らす。
「君にはこれから、この機体に乗って戦闘に出てもらう」
上官の視線の先には、リアムの髪と同じブロンズの外装で覆われた二本脚のロボットがそびえ立っていた。
軍の木馬、『Destrier』
「俺に……こいつに乗って戦えと……?」
「そうだ、君はかつてこのDestrierのプロトタイプの試験に参加していたな。その腕を見込んでのことだ」
薄暗い格納庫と帽子の影が合わさり、上官の表情は読み取ることができない。できたとしても、そこにあるのは冷たい無表情だっただろう。
「しかし、俺は……」
「リアム・アンダーソン諜報事務官、パイロットテストに適合していながら、その能力を事務仕事に喰い殺されるのは勿体ないとは思わないか?
我が国には母国の為と命を張る覚悟があってもロボットに乗れない兵士もいるんだ、誇れ」
上官は淡々とリアムに言い放ち、来た方向に踵を返す。
「君に合わせたパイロットスーツは既に準備されている。
君には、期待しているよ」
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