第1章

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――アルス暦8年 5月13日―― 頭が痛い。 ここはどこだ。 ぼーっとする頭を無理やりに上げ、自分が今どこにいるかを確認する。 辺りは酒の臭いが充満していて、少し薄暗い。 俺は木のテーブルで寝ていたようだ。 20人は入りそうなこのお店に俺以外の客は一人もおらず、おそらくもう店を締めた後なのだろう。 バーテンダー「お客様、もう間もなく閉店のお時間となります」 俺が起きたことを確認したバーテンダーの男は、本当の意味で店を締めるために声をかけてきた。 今が何時か確認したいところだが、取り敢えず会計を済ませてからでいいだろう。 「…いくらですか?」 バーテンダー「金貨2枚になります」 なんてこった。 以前俺が全力で飲んだ時の2倍の値段がするじゃねぇか。 誰かと一緒に飲んだっけ? あまり待たせるわけにはいかないので、考え事は後にしてとっととお代を払うことにする。 唯でさえ通常の閉店時間より長居しているのだ。 この店は何度も利用しているので、料金をぼったくることもないだろう。 バーテンダー「ありがとうございました」 バーテンダーに見送られながら店をあとにする。 今から一人ではしごする元気もない。 覚束ない足取りで我が家を目指すことにする。
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