第3章

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ノーデン様…いや、ノーデン先生は右手に持っていた剣をしまって前で腕を組んだ。 カトリーナ「じゃあアドバイスだ。最初の切り掛かりフェイント、目線が私の右脇を向いていたぞ。それじゃあバレバレだ。次に雷魔法の目眩ましだが、魔法構築のタイミングが悪い。剣に属性を付与するには遅いし、雷撃を放つには距離が近すぎる。結果的に雷撃への対抗魔法という選択肢が無くなって、目眩ましと雷を直接流し込む接触行為の両方に対応できる魔法障壁が私の安定行動になった。魔法構築のスピードに自信があることが逆に仇になったパターンだな。あとは――」 「――ノーデン様!間もなく会議が始まりますので急ぎご準備の方を!」 彼女の話を遮ったのは、息を切らして訓練場の扉から入ってきた文官の男だった。 その慌てようから察するに時間が余りないのだろう。 カトリーナ「ああ、もうそんな時間か。すぐ行くから先に行ってていいぞ!」 「本当ですか!?信じますからね!」 そう言い残して男は出て行ってしまった。 カトリーナ「…なあミカゲ君。どんな戦い方が一番強いか分かるか?」 試合が終わったことで観戦していた者たちが自分の持ち場へと戻っていく中、唐突にそう問いかけられた。 一番強い戦い方… 騎士の教本にはそのような内容は記載されていない。 つまり彼女は俺の考えが聞きたいのだろう。 そして俺の中にはその回答が用意されている。 トウヤ「攻めの押し付けです」 カトリーナ「なぜ?」 トウヤ「戦いはじゃんけんではありません。いわばカードゲームのようなものです。最初に先攻と後攻が決まって自分が持つ手札を切って相手を追い詰めていきます」 「後攻は先攻が展開したフィールドで戦うことを余儀なくされます。従って後攻はまず先攻が用意した戦略に対抗しなければなりません。そして防戦に回っていけばいくほど自分の望む攻撃ができなくなっていきます」 カトリーナ「面白い例えだな。だが実戦ではカウンターに優れた者もいるだろう?」 トウヤ「カウンターが得意な騎士にも苦手な攻撃はあります。しかし攻め手には関係ありません。自分が得意な攻撃を好きなタイミングで、間合いで、スピードで行えます。さらに言えばこの傾向は実際の試合にも見ることができます」
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