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トウヤ「下級騎士の平均試合時間は約6分、一方騎士長同士の試合は平均で約2分。この違いは試合内容を見れば一目瞭然です。下級騎士は攻撃が単調で攻め手を欠き、疲労で動きが鈍ったことが敗因であることが少なくありません」
「けれど騎士長は違う。両者の勝敗はほぼ全てどちらかの攻撃が相手の防御を破ったことによる降参かレフェリーストップで決します。攻守が入れ替わることはあってもカウンターが決定打となった試合は見たことがありません。つまり、高レベルな試合では防御は悪手足りえるということです」
カトリーナ「…勤勉だな。確かに君の言うことはもっともだ。最初に戦いの型を学び、防御法を知り、最終的には自分が信じる攻撃を磨くようになる。騎士長クラスの人間は皆例外なくこの道を辿る。これは誰かに強制されるのではなく、自分の経験を基に自分で選択する道だ」
「けど私の答えは違う」
そう言う彼女は、何かを懐かしんでいるように見えた。
カトリーナ「私の答えはある種の感情論なんだが、どんな強大な敵を目の前にしても背を向けずに立ち向かう意志を持つことが最も大事だと思っている。先ほどの質問に照らせばどんな敵にも決して背を向けない戦い方、になるな」
トウヤ「そんなこと――」
カトリーナ「――当たり前だと思うか?だが実際に命のやり取りをするとこれがいかに難しいか分かるはずだ。自分が磨いてきた技術を上回る力を持つ相手と戦う時、必ず頭に死がちらつく。そしてその不安は仲間の士気をも低下させてしまう」
「そんな時に勝つことをあきらめないバカがいるだけで周りの気持ちが全然変わるんだよ。私自身、旅の中で奴に何度助けられたか分からない。どんなに大きな力を持っていてもそれを行使する意思が無ければ飾りと一緒だ。逆に、どんなに小さな力でもそれを生かそうとする意思があれば何かを起こせる」
そして彼女は最後にこう締めくくった。
カトリーナ「それだけは私が保証する」
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