第4章

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――アルス暦8年 6月20日―― トウヤ「リンフォード、攻めと守りの切り替えが甘いぞ。お前のトリッキーな攻めは一気に畳みかけてこそだろ」 リンフォード「うーん、分かってはいるんだけだけど…。どうしても守りの方に気がいっちゃうんだよね」 今俺たちがいるのは剣術訓練場。 週に一度の演習の時間を使って自主練に励んでいるところだ。 トウヤ「守りも大事だけど、お前の場合は攻めなきゃ始まらないだろ。体格も良くないんだから力負けしちまうぞ」 リンフォード「うん」 彼の返事は小さく、いまだ不安そうな表情をしている。 リンフォードの指導をするのはこれで2回目。 戦術を急に変えることに抵抗があるのかもしれない。 それが意識的か無意識かは分からないが、そこをどうにかする必要がありそうだ。 トウヤ「一旦休憩にしよう。俺も考えたいことがあるし」 リンフォードもそれを了承し、俺たちは壁際に寄って並んで座った。 アルス王の演説から1ヵ月あまりが経過した。 当初は困難を強いられると思われた貴族解体だが、その予想に反して今現在11家が解体されている。 その中には100年以上の歴史を持つ大貴族も含まれているのだから驚きだ。 これほどハイペースに進んでいくことを誰が予想しただろうか。 そして騎士たちの中で、今回の騒動に大きく関係する男がいるという情報が出回っている。
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