第4章

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名前をフェリックス・ナヴァーロ。 2年前の入隊式で見かけて以来1度も会っていないが、一応俺と同じ17歳のはずだ。 彼は入隊する前から注目を集めていた。 剣と体術の腕を勇者王に認められてスカウトされた、という噂があったからである。 そして事実、新たに入隊した者たちの中でただ一人特務隊に配属された。 先週バート先輩に聞いた話では、特務隊が設立されてから8年の間でそのような人事がされたことはその1度きりだという。 さらに、入隊後にも彼は異例とも言える出世を果たす。 俺は1年前に中級騎士になったが、彼は同じ時期に上級騎士の昇進試験を突破したというのだ。 それも中級騎士試験を受けずに昇進が認められたらしい。 昔から個々の能力を重要視する騎士団ではあるが、この話は西門支部でも随分と噂が飛び交ったのを覚えている。 バート先輩は話の中でこうも言っていた。 バート『――あのフェリックスとかいうやつ、特務隊でも敵なしの腕らしいぞ。仕事に関してあまり話したがらない特務隊勤めの知り合いがいるんだが、今回の騒動はそいつの働きが大きいことだけは聞き出せたんだ』 『――あんまり優秀なもんだから、大臣や高官の連中が影で勇者の再来なんて言ってるのを聞いたっけなぁ。…まったく、優秀な後輩が多くて先輩の立つ瀬がねえぜ』 そう言って苦笑いしながらビールを呷るバート先輩の姿が記憶に新しい。 トウヤ(…オリヴィア第二王女はどう考えているんだろうな) 抜け目ない彼女がこの情報を調査していないはずがない。 恐らくだが俺よりもずっと正確な情報を持っているだろう。 それでも俺に何も言ってこないということは、今は言う必要がないと判断しているのか?
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