プロローグ

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俺の名前は萩原大輔。 絶賛ニート中の自宅警備員である。 アニオタとミリオタの亜種であり、新進気鋭の23歳だ。 今日も部屋で一人、今期期待の『マジカル少女!☆ののかちゃん!』を視聴していたのだが、 急に眠気に襲われたのを最後に意識がプッツリ切れてしまった。 そしてたった今意識が戻った訳だが、どうにも様子がおかしい。 まず、身体の自由がほとんど効かない。 ほとんどと言うのはそのままの意味で、まったく動かせない訳ではないが、 身体を起こしたり寝返りを打つことすらできない。 まるで手足が言うことを効かなくなってしまったかの様だ。 どういうことなの…。 そう呟いた筈だったが、舌の呂律はまともに回らない。 「ああぅあああう」と言う意味の分からない妙に高い声が発せられただけだった。 あれえ…? 懸命に動かしている右手を横目で見ると、 そこにはまごうことなき赤子の手がぎこちない動きで振り回されていた。 あ。 え? 頭は持ち上がらなかったため、目だけを覗き込むように下半身に向けると、 そこには可愛らしいふっくらとした赤子の脚がしっかりと俺の身体から生えていた。 おかしい。 いつから俺はこんなキューピーマヨネーズみたいな身体になってしまったのか。 あ、そうか。 これは夢か。 そうにちがいない。 なーんだ夢かぁ。 ん? 急に伸びてきた二本の腕に抱き抱えられると、抱き手は赤子をあやすように身体を揺り動かしてきた。 ははーん。 つまりは産まれたばかりの赤子(俺)をあやしているって訳だな。 顔はぼやけててよく見えないが、恐らくは母親か父親と言ったとこか。 「───。────」 抱き手が何かを語りかけてきた。 声が聞き取れない訳ではないが、内容が理解できない。 明らかに日本語では無いことは確かだ。 ただ、嬉しそうに語りかけていることはわかった。 すると今度は誰か違う人に手渡された。 優しく包み込むように、大事に大事に手渡された。 今度の抱き手は腕が堅かった。 肩幅が広いとこを見るに、ガッシリとした男であることがわかる。 この人も何やら笑って語りかけてきたが、やはり言葉は理解できない。 夢ならそれくらい融通効かせてもいいもんだがな。
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