プロローグ

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結論から言うと、これは夢じゃ無かった。 もうそれはパニックになった。 しかし、泣こうが喚こうがどうにもならない。 特にもとの世界に未練があると言うことは無かったが、 今自分がこんな状況に陥っていることが気持ち悪くて仕方が無かった。 赤ん坊のままで前世の記憶をそのまま引き継いでいるという事実に平然としていられる程、俺のメンタリティは強くない。 体感で言うと恐らくあれから一週間以上は経っている。 相変わらず俺はキューピーのままだし、元の部屋で目覚めることもない。 ぼやけていた視界は鮮明になったが、視界に現れる顔ぶれはどれも知らない者ばかり。 それも多くは若い男女で、どうみても日本人には見えなかった。 他にも、時おり小さな一人の女の子が俺のいるベビーベッドを覗きにくるくらいだ。 珍しいモノを見るような目で俺を見下ろし、時にはその手で抱き抱えようとされたこともあったが、 母親らしい人物が飛んできて怒られるとギャン泣きしながら諦めている様子だった。 それでも次の日になると懲りずに俺のもとへとやってくると、抱き抱えようとしてくるので、 泣きわめいてやったら案の定母親からこっぴどく怒られてはショゲていた。 落とされでもしたら堪らんからな……許せ。 相変わらず何を言っているのかはわからないが、状況から察するに俺はこの家族に産まれたばかりの赤子であるらしい。 彼等の家族構成は、今まで顔を見た中で考えると赤子おれを含めて4人。 つまり、父、母、娘、俺と言うわけだ。 ちなみに俺は男、であるらしい。 なんとか首を動かせるようになったのは最近だが、おかげでミニマムながらも息子がいることには安心した。 母親がわりと北欧系に近い美形なのもあって、男の子的な思考が働いていたために、 性別が女の子だったらどうしようと考えていたが、それは杞憂に終わったようだ。 まあそれでも中身は成人してるのだから、普通におかしいのだが。
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