プロローグ

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産まれてから半年が経った。 俺は遂にベビーベッドから解放された。 既にハイズリを通り越してハイハイが出来るまでになっていたのには少し驚いた。 まあ最初から自我があるからな。 「触りたい」とか「移動したい」といった自我が発生するでもなく、 既にあるのだから当然なのかもしれない。 しかしこの解放によって当然ながら俺の行動範囲は劇的に増えた。 行けるとこへはどこへでも行った。 元々それほど大きな家でもなかったし、階段や段差といったものもなかった。 リビング、寝室、風呂場、トイレまで、 とにかく行けるとこには行ってみた。 ただ一つ、この間父親が登っていた屋根裏部屋には行っていないが。 いつか制覇してやろう。 「アルスったら。またこんなところに」 俺は寝室が大好きだった。 今は温和な気候らしく、陽当たりと風当たりが良いこの部屋は、この家で最高のコンディションであることを知っているからだ。 仰向けになって日向ぼっこしているところを母親に発見され、リビングへと拉致された。 ええい、うっとうしい。 抵抗しても無駄なのは身をもって知っているため、無駄な抵抗はしない。 と言うよりこの時間になればリビングに連れていかれるのは知ってたんだけど。 リビングでは父親とアルフィが既に席に着いていた。 俺が連れてこられたのを見るとおもむろに頬が緩んでいる。 「また寝室か?」 父親が母親にそう訪ねると、母親はクスリと笑って返事をした。 「ええ。いつも通り日向ぼっこしてたわ」 「あたしの部屋に来れば良いのに」 と、アルフィが口を尖らせる。 ああ、二度と行かねえ。 抱き枕にされて酷い目にあったからな。 母親は俺を赤子用の椅子に座らせると、その横の椅子に座り、父親と向かい合った。 ちなみに俺の正面がアルフィだ。 「じゃあ、お祈りを」 「はぁい」 母親が胸に手を当てると、父親とアルフィがそれに続いた。 これも毎度の事だ。 なんの宗教かは分からないが、朝飯、昼飯、晩飯と変わらず飯を食べる前は必ずこのお祈りの時間がある。 「いただきます」と違って長いんだよなぁ、これ。
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