10人が本棚に入れています
本棚に追加
いつの間にか1歳になっていた。
気付けば二足歩行も出来るようになり、ぎこちないながらも舌に呂律が回ってきた。
まあそれでも喋れる言葉は数えるほどしか無いんだがな。
この国の言語の発音が難しいのが要因でもあるのだが。
にしても、やっぱり俺の成長速度は通常よりも少し早いようだ。
やはり最初から自我があるというのが、成長に影響しているのだろうか。
一歳になるころ、アルベルトに連れられて一人のおっさんが家に招かれた。
白髪混じりの髭を蓄えた初老のおっさんだった。
この一年で家族以外の人間を初めて見たからか、何となく新鮮だ。
「君がアルス君か。こんにちは。私はブラハム、この村の村長だよ」
「あーい。こううああむ」
言葉はほとんど理解出来るようにはなったが、やはりまだ言葉はうまく操れない。
まあ一歳程度じゃ仕方ないか。
「あら、村長。こんにちは。今日はよろしくお願いしますね」
「リニア君か。ああ、任せておきなさい」
リニアが仕事場から戻ってくると、村長と軽く会釈を交わしている。
今日は何か村長と約束でもあるのかな?
おっ?
村長が俺を抱き抱え、「大きくなったものだ」と言いながら玄関へと出ていく。
「じゃあリニア、行ってくるよ」
「ええ。結果が楽しみだわ」
リニアが微笑みながら手を振り、俺を抱えた村長とアルベルトを見送っている。
俺が村長の馬に乗せられたと言うことは、どこかへ行くようだ。
アルベルトも馬に股がっていた。
いよいよ外に行けるのか!
今日までずっと家の中だったからな!
中身は成人しているせいか、流石に退屈であったのは仕方がない。
最初のコメントを投稿しよう!