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桜が満開の並木道を、栞里(しおり)は制服のスカートをなびかせながら、ワクワクとした気持ちで歩いていた。
栞里にとって、この学校の制服を着ることは、一つの夢だった。中学の頃は、制服は巷でダサイと有名な、真っ青のブレザーだったから、憧れのセーラー服に袖を通したときは、鏡で何回も自分の姿を見てしまった。
待ちに待った高校生活。どんな三年間になるのだろう。きっと、楽しくなるに違いない。
新しい制服に、新しい友達。これから始まる生活を想像してみると、自然と顔がにやけた。
「桜、綺麗だな」
「そうだね!」
栞里の隣を歩いている、幼馴染の健太郎(けんたろう)は、家が隣同士で、幼いころから栞里と健太郎は一緒に登校するのがおきまりだった。
「栞里と一緒に学校に行けて……嬉しい」
「私も、けんちゃんが一緒に行ってくれると心強いよ」
今日は、午前中はオリエンテーション、午後から入学式というスケジュール。
どうやら、栞里の母と健太郎の母も、2人そろって午後に一緒にやってくるらしく、帰りはみんなで帰ろうねと栞里の母は言っていた。
「一緒のクラスだといいね」
「そうだなー。クラス数がかなりあるから、そればっかりはわかんねーなー」
栞里と健太郎の学校からこの高校へ進学するのは、2人を含めて、たったの4人。ほかの2人の子とは栞里はそこまで話したことがなかったので、実質知り合いは健太郎ただ一人。
栞里は、ちょっぴり不安を抱えながら、学校の門をくぐった。
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