第5章 キン肉マン

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だけど、このお客さんは、そのレベルではなかった。 まぁどっちにしても、予約が一杯なので、断らなければならなかった。 なので、変に「飲酒されているお客様は・・・」と断って絡まれるより、「本日は予約が一杯なので・・・」 と断る方がややこしくならないだろうと思った。 「・・・ですので、申し訳ごさいません。」 絡まれないように、丁重にお断りした。 「あ~ん・・・ダメなのか!」 あまり下手にでるのも、しゃくだった私は、少しドスを効かして答えた。 「はい、申し訳ごさいません。」 すると、そのお客さんは顔を上げ、私を見た。 私も、そのお客さんを見据え、さらにドスを効かして言った。 「申し訳ごさいません。本日は予約が一杯ですので。」 お客さんは、私の顔ではなく、体をしばらく見つめていた。 「お、俺は・・・あ、アンタみたいな筋肉マンに揉んで欲しかったんだよ~。」 「申し訳ごさいません。」 なんか筋肉マンと言われたのが、少しおもしろかったので、笑みを浮かべながら言った。 周りのスタッフもやりとりを聞いて、チラチラこちらを見ていた。 「お、俺は・・・き、筋肉マンに・・・おい!筋肉マ~ン!」 何故か私は、この酔っ払いに「筋肉マン」と認識されてしまったらしい。 「き、筋肉マンに・・・おい!筋肉マ~ン!」 そう言い残して、結局、そのお客さんは帰って行った。 もう、ゆでたまご先生作のキン肉マンみたく呼ばれて、オモシロくて仕方なかった。
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