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「……少し動くか」 部屋の隅に立てかけてある太い木刀を取り、素振りを始めた。こういう時に思い出すのは、日野にいたころのことだった。 あの頃は近藤さんに見てもらうこともあったし、総司や山南さんと打ち合うこともあった。上京してからは立場上皆と共に稽古をすることが少なくなっていたので、もう随分昔のことの様だ。 無心で振っていれば次第に集中力が増し、余計なことを考えなくてすむ。これは普段緊張を解けない土方の休息のひとつだった。
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