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理不尽さに向け、怒号を上げる者。
恐怖に混乱し、ただ悲鳴を上げ続ける者。
眼前の真実を受け入れられなくて、上手な機知に富んだ言葉を放とうとし、結果として無様さだけを晒け出す者。
一つの事柄に対して、人々の取る態度はそれぞれに違った。
ただ、皆に共通して言える感情は有る。
『生きたい。あんな奴等と同じに成りたくない』
我先にと逃げる人々の背後から、ゆっくりと追い縋って来るそれ。
何故、私達はこいつ等の餌食に成らなくてはいけないのだろう。
幸運にも、世界一周のクルーズのチケットを当てた者達。
無作為に選ばれた人は体格どころか、人種も年齢も、その生活の程度も多種多様で有った。
全ては用意されていますの謳い文句を信じたか、最初から持たないか、小さな鞄どころか着の身着のままで参加して来た者もいれば、幾つもの旅行鞄にブランド物のドレスをぎっしり詰め込んで来ている者もいるのだから。
一人だけ、車椅子で参加して来た女性が真っ先に見捨てられていた。
我先にと逃げた者達には彼女を救う余裕等無く、状況が如何なるものなのかを理解しきるまでのパニックも有った。最初は、皆して呑気にもサプライズなのかと思っていたのだ。
今思えば滑稽だ。
多種多様に見えた者達にも、ただ一つの共通点が有ったのだ。
誰もが天涯孤独。
だから、選ばれたのか?
多種多様な被験者が欲しいと。
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