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ある程度の距離を逃げた私達は、周りを警戒しつつも小休止を取っていた。
鬼ごっこの要領だ。
奴等は遅い。
逃げては距離を保ち、少しでも体力の回復を望むべく周囲に気を配りつつ休みを取る。
それの繰り返しだったが、先に希望が有る訳でもない。
死を見据えた上での、笑えない鬼ごっこだった。
飲まず食わずで逃げ続けていては、体力の無い者から脱落するのは目に見えている。
「夜行性?」
股上の浅いホットパンツに、チューブトップの金髪少女が首を傾げる。
「だって、陽が落ちてから現れただろ」
肌色の濃いチリチリ髭の言葉通りだった。
「可能性は低いな。奴等が解き放たれたのが、あの時間だったと考えた方が良い。人間は大して夜目が利く訳じゃないんだ。現に私達は暗闇の中を矢鱈に逃げて、あんな遅いのを相手に脱落者も出ている」
「あの二人は仕方ないよ」
仕方ないか。確かに一人は車椅子だったし、もう一人は体型を良く支えられるなと感心する程の高いピンヒールを履いていた訳だったが。
「でも、あれってゾンビでしょ? ゾンビって死んでいるのに何で人を食べるのよ。必要ないでしょ、生きてないんだから食べ物なんて」
「そりゃあ、フィクションだ」
「本物も居るよ。ブードゥーのが」
「ブードゥーのは毒薬で人を操るんだ。死んでいる訳じゃないし、それに今は関係ない。仮にあれをゾンビとして話を進めよう」
ライターを取り出し、更にポケットを探ったが、既に煙草は切れていたのだった。
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